交換留学の校内選考、結局GPA勝負だった話|志望理由書を全文公開

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交換留学に行きたい、と思ったとき。 多くの人がまず調べるのは「英語のスコアはどれくらい必要か」だと思う。

私もそうだった。 でも実際に校内選考を経験して感じたのは、それとは少し違う結論だった。

語学スコアは通行証にすぎない。勝負を決めるのはGPAだ。

これはあくまで私の体感であり、大学や年度によって事情は変わる。 それでも、これから校内選考を受ける人にとっては、早めに知っておいて損のない話だと思う。

この記事では、私が実際に提出した志望理由書の全文と、今読み返して思うことまで書く。 ※この記事は、私が出願した年度の話である。制度や要件は変わるので、必ず自分の大学の最新の募集要項を確認してほしい。


交換留学の校内選考は、想像よりずっと早く始まる

私のスケジュール

私が行ったのは、2年後期(秋学期)から3年前期(春学期)までの1年間の交換留学だった。

では、その出願はいつだったか。

1年生の9〜10月である。

入学して半年である。 サークルの雰囲気にようやく慣れて、初めての試験期間を乗り越えて、夏休みが終わったくらいのタイミング。そこで書類を出している。

留学に行くのは2年生の後期。 でも、その選考は1年以上前に終わっているのだ。

提出したのは、この3つ

出願で見られたのは、大きく分けて次の3点だった。

  • 1年生前期のGPA
  • 語学要件(私はIELTS)
  • 志望動機・志望大学などの書類

ここで気づいてほしいのは、GPAは「1年生前期」のものしか使えないということ。

つまり、入学して最初の学期。 右も左もわからないまま受けた授業の成績が、そのまま提出される。

私は1年生の前期、とにかくGPAを高く取ることと、語学要件を満たすためにIELTSの勉強をすることに全力を注いだ。 今振り返っても、あの半年に賭けるしかなかったと思う。

だから、準備は1年以上前から始めるしかない

「2年生になってから考えよう」では、間に合わない。

留学したいという気持ちが少しでもあるなら、入学した瞬間から動き出す必要がある。 具体的には、1年生前期の授業選択と、そこでの成績。そして語学試験のスケジューリング。

厳しい話に聞こえるかもしれないが、逆に言えば、早く知った人ほど有利ということでもある。 この記事を1年生のうちに読んでいる人は、それだけで一歩リードしている。

短期留学や私費留学は、話が別

念のため補足しておく。

ここで書いているのは、大学の協定校に交換留学で行く場合の話だ。 夏休みなどの短期プログラムや、私費留学(自分で現地大学に出願する形)は、スケジュールも要件もまったく異なる。

「1年生の秋に間に合わなかった」からといって、留学の道が閉ざされるわけではない。そこは誤解しないでほしい。


結局はGPA勝負だと感じた理由

ここからが、この記事でいちばん書きたかったことだ。

語学スコアは、要件を超えていれば十分だった(体感)

これは私の体感なので断定はできない。 ただ、周囲を見ていて強く感じたことがある。

語学試験の点数は、出願要件を超えていればそれでよく、そこから先は加点として大きく働いていないように見えた。

なぜそう思ったか。

TOEFL110程度という、かなり高いスコアを持っている人でも、第一志望に落ちているのを見たからだ。

TOEFL110は、決して簡単に取れる点数ではない。 それでも第一志望に届かなかった。ということは、選考を分けていたのは語学スコア以外の何かだったということになる。

そこで残るのが、GPAである。

もちろん、これは私が見聞きした範囲での話だ。選考基準の詳細が公開されているわけではないし、志望大学ごとの倍率という要素も大きい。 それでも、「スコアさえ高ければ通る」という考え方は、少なくとも私の周りでは成り立っていなかった。

語学スコアの正しい位置づけ

だから私は、語学スコアをこう捉えている。

足りなければ土俵に上がれない。でも、超えた分だけ勝てるわけではない。

要件が6.5なら、まず6.5を取る。それは絶対に必要。 でも7.5を目指して半年かけるくらいなら、その時間をGPAに回したほうが、選考としては合理的かもしれない。

(ただし、志望校の選択肢を広げるという意味では、高いスコアには別の価値がある。この点は後で書く)

法学部のGPAは、正直かなり不利に感じた

ここは本音を書く。

私は法学部だった。 そして、法学部のGPAは、他の文系学部と比べて取りにくいと感じていた。

科目の性質上、成績評価が厳しくなりやすい。同じだけ勉強しても、数字として残るGPAは伸びづらい。 一方で校内選考では、学部の事情は考慮されず、GPAという同じ物差しで並べられる

これは構造的に不利だと思った。

そして実際、私は第一志望に通らなかった。

もちろんGPAだけが理由だとは限らない。志望大学の人気度も関係するだろうし、私の書類の完成度の問題もあったはずだ。 ただ、「学部によって数字の重みが違うのに、同じ土俵で比べられる」という現実は、当事者としてはやはり厳しかった。

これは誰かを責めたい話ではない。 ただ、同じような学部にいる人には、「自分の学部のGPAは、他より1段厳しいかもしれない」という前提で早めに動いてほしいと思う。知っているかどうかで、取れる対策が変わる。


IELTSは6.5→6.0。下がった。それでも切符は掴めた

語学の話も少しだけ触れておく。

私はIELTSを2回受験した。

  • 1回目(6月):6.5
  • 2回目(9月):6.0

第一志望だったシンガポール国立大学(NUS)の要件は6.5だったので、1回目の時点ですでに超えていた。 それでも2回目を受けたのは、より高いスコアを取って出願できる大学の選択肢を広げたかったからだ。

結果は、下がった。

理由は自分でもわかっている。 1回目は大学受験が終わって間もない時期で、英語のポテンシャルがいちばん高かった。対して2回目は夏休みを挟んでいて、正直だらけてしまった。加えて、大学受験からGPA、IELTSと走り続けた疲れも来ていた。

ただ、この2回目の受験は無駄ではなかった。 2回目のライティングで6.0を取れたことが、結果的にNTUへの切符につながっている。

この話は長くなるので、IELTSの記事に詳しく書いた。独学で6.5を取るまでの流れも含めて、そちらを読んでほしい。

▶︎ [IELTS独学で6.5を取った話の記事へ]


私が実際に提出した志望理由書(全文)

ここから、実際に提出した志望理由書を公開する。

先に断っておくと、丸写しは絶対にしないでほしい。 似た文章は、読む側にはすぐわかる。それに、この文章は「私が私の経験で書いたもの」だから意味を持っている。あなたにはあなたの材料があるはずだ。

参考にしてほしいのは、内容ではなく構造である。

設問1:留学の目的(800〜1200字程度)

設問は「興味のある学術分野と絡めて、留学を目指す目的を説明しなさい」という趣旨のものだった。

私が留学を志す理由はいくつかあります。

まず、自己の精神的成長です。異なる地での生活は、大きな苦労や困難が伴うと思います。しかし、追い詰められるような環境だからこそ、時には自力で突破口を見出し、時には努力で圧倒し、時には周りの人に助けを求め、その困難を乗り越えられた時には、大きな達成感を得られるものだと思います。もちろん、言語や文化の壁もあり、大学での勉強だけでなく、日常生活においても骨が折れることが沢山あると思います。生活を送るだけでも精一杯な毎日かもしれません。しかし私は、その日々を、学びに繋がるという意味を込めて「幸せの種」と捉えることで、圧倒的に充実した価値ある一年間となることを確信しています。

また、困難を乗り越える過程で、語学能力の向上はもちろん、異なるバックグラウンドを持つ人と関わることによる、さらなる視野の拡大が期待できます。日本語と英語や中国語では、一つの事柄に対しても、表現されるニュアンスも捉えられ方も差異が生じます。そして、その差が、時には衝突を生み出してしまうと考えます。私は、グローバル化が進み、外国との関わりが避けられない現代において、言語・文化間に生じる「差異」を深く理解し、双方を受け入れることが異文化理解であると思っています。また、その柔軟な思考力や適応能力は、将来世界を生きていく上で必須のスキルです。そのようなスキルを積極的に育むと同時に、大きな自己成長に繋がり、何物にも代え難い留学先での一年間にしたいと思っています。

さらに、人脈の拡大も期待できます。留学中に出会う現地の学生や他国の留学生との交流を通じて、国際的な人脈を広げることができます。そこで生まれた交友関係は、私の視野を広げ、豊かな知識の宝庫となるとともに、将来のキャリア形成の支えとしたいと考えています。

学術的分野では、人文学や社会科学を中心に、様々な地域における文化や思想、社会的な構造や制度を研究したいと思います。日本ではない国、母国語ではない言語で学問を扱うことにより、より深く、幅広い価値観を持って学ぶことができると考えています。特に、シンガポールをはじめとした多文化国家では、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方が注目されていて、人材の多様性を高めるだけでなく、その多様な人材が十分に能力を発揮できる組織風土づくりに力を入れています。そのような国で学問を学ぶことで、今後のビジネスの成長と人々の満足度の向上に不可欠の概念である、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方や背景を深く理解し、将来社会人として、この概念を基に先導する立場になりたいと強く思っています。

留学で得る知識や学び、人脈、時間は、私の一生の財産となると確信しています。また、自信を持って財産であったと言えるよう、それに見合う行動をとるべく精進し、貴重な留学期間を過ごしたいと思います。

設問2:志望大学の理由(400〜800字程度)

こちらは「選択した大学の志望理由を書きなさい」という設問。 なお、志望理由に一貫性があれば大学ごとに分けて書く必要はなく、複数言語にまたがる大学やプログラムを選んでいる場合はそれぞれの理由を明確にすること、という但し書きがついていた。

私がシンガポールの大学を志望する理由は、高い教育水準と、国際的な学習環境にあります。特に、シンガポール国立大学や、南洋理工大学は、世界的にも高い評価を受けていて、アジアトップレベルの講義に挑戦したいと思いました。そして、様々な国から学生が集まる多文化都市であるため、私が志す人文社会科学系の学問分野の研究に適していると考えます。また、主な公用語が英語と中国語であるため、中国系のバックグラウンドを持つ私に最適であり、英語だけでなく中国語力の向上も期待できる点も魅力的でした。

今年8月、シンガポール国立大学を訪問するため、シンガポールへ渡航しました。授業の様子を見ることはできませんでしたが、広大な敷地と校舎を見学することができました。また、大学の食堂や「ホーカーセンター」と呼ばれる屋台市場では、多様な地域の人々を目にすることができ、改めてシンガポールの多文化性を感じました。

今回の訪問で、地元の生活に溶け込むような体験ができたとともに、シンガポール政府の統治力にも惹かれました。例えば、所々に法規制の標示が見られ、政府の厳格な法治による治安の良さを実感しました。それだけでなく、シンガポールの外交・経済政策は、アジアでも中心的な役割を担っています。これらのことから見てとれる、シンガポール政府の強力な統率力もシンガポールを志望する理由の一つとなりました。

欧米圏の大学では、英語を中心に、世界トップクラスの教育機関での学問の研究を試みたいと思い、志望しました。特に、イギリスやアメリカでは、本格的で高度な英語表現を身につけるとともに、アメリカでの自由で多文化的なカリキュラムや、イギリスの豊かな文化的・歴史的学問の伝統や国際的に高い評価を受けているところが興味を惹かれました。

中国の大学も、世界的な評価を受けているだけでなく、私の中国語力を試す貴重な機会でもあるため、応募したく思いました。


今読み返して思う、弱かった部分と効いた部分

自分の文章を公開しておいて言うのもなんだが、正直に書く。

この志望理由書は、前半が弱く、後半が強い。

設問1は、正直かなり抽象的だった

「精神的成長」「視野の拡大」「人脈の拡大」。

冷静に読み返すと、これは誰でも書ける内容である。 おそらく同じ年に出願した学生の多くが、似たようなことを書いていたはずだ。

自分にしか書けないことが、ほとんど入っていない。

唯一残っているのは、困難な日々を**「幸せの種」**と捉えるという表現。 ここだけは自分の言葉になっていて、今読んでも悪くないと思う。

逆に言えば、1200字近く書いて、自分の言葉が一箇所しかなかったということでもある。

設問2が強かったのは、自分の足で見てきたからだ

一方、設問2は今読んでも手応えがある。

理由ははっきりしている。 出願前の8月に、実際にシンガポールへ行ったからだ。

NUSのキャンパスを歩いた。 ホーカーセンターで、いろんな地域の人が同じ場所でご飯を食べている光景を見た。 街を歩いていて、あちこちに法規制の標示があることに気づいた。

これらは、パンフレットやウェブサイトを読んでいるだけでは絶対に書けない。 「治安が良い国です」ではなく、「所々に法規制の標示が見られ、厳格な法治による治安の良さを実感した」と書ける。この差は大きい。

この落差から、私が学んだこと

つまり、こういうことだ。

自分の足で見てきたことを書いた部分だけが、強かった。

志望理由書で差がつくのは、語彙でも構成でもない。 その人しか持っていない具体的な材料があるかどうかである。

現地に行けない人もいると思う。それは仕方がない。 でも、代わりになる材料は探せるはずだ。留学経験者に話を聞く、その国の本を読む、オンラインで現地の学生と話す、その大学のシラバスを実際に読んで具体的な授業名を挙げる。

「なんとなく良さそうだから」を、「これを見て、こう思ったから」に変換する。 これが、志望理由書でやるべき唯一のことだと今は思う。


第一志望はNUSだった。それでも今はNTUでよかったと思う

正直に書くと、第一志望ではなかった。

結果が出たとき、悔しくなかったと言えば嘘になる。 GPAで届かなかったのだという事実も、しばらく引きずった。

でも、1年間NTUで過ごして帰国した今、はっきり言えることがある。

行った先で何をするかのほうが、どこに行ったかより、はるかに大きい。

これは負け惜しみではない。 NTUで受けた授業、住んだ寮、出会った人、ドラゴンボートを漕いだ日々。そのどれもが、大学名では説明できないものだった。

「第一志望に落ちたら意味がない」と思っている人がいたら、それは違うと伝えたい。 大学名に幻想を持ちすぎることの危うさについては、別の記事に詳しく書いた。

▶︎ [名門幻想についての記事へ]


これから校内選考を受ける人へ|時系列でやること

最後に、実際にやることを時系列でまとめておく。

入学前〜1年生4月:情報を取りに行く

  • 自分の大学の交換留学制度を調べる(募集要項は毎年公開される)
  • 出願がいつかを確認する。1年生の秋の可能性がある
  • 志望しそうな大学の語学要件を調べておく

1年生前期(4月〜7月):ここが本番

  • GPAを取る。これが最優先
  • 授業選択の段階から、成績を意識して組む
  • 語学試験の勉強を並行して進める
  • 可能なら、この時期に1回目の語学試験を受ける

私の実感では、留学の合否はこの半年でほぼ決まっている。

1年生夏(8月〜9月):材料を集める

  • 語学試験の2回目(必要なら)
  • 可能であれば、志望国に行ってみる
  • 行けなくても、志望校のシラバスを読む、経験者に話を聞くなど、書類に書ける具体を集める

私は8月にシンガポールへ行った。この2週間程度の経験が、書類の後半を丸ごと支えてくれた。

1年生9月〜10月:出願

  • 志望理由書を書く
  • 抽象的な言葉が並んでいないか、自分で読み返す
  • 「これ、他の人も書けるな」と思った段落は、書き直す

まとめ:語学は通行証、勝負はGPA

長くなったので、伝えたいことをもう一度だけ。

  • 交換留学の校内選考は、1年生の秋に始まる
  • 使えるGPAは1年生前期のものだけ
  • 語学スコアは要件を超えていれば十分、というのが私の体感
  • 高いスコアがあっても、GPAが足りなければ第一志望には届かないことがある
  • 志望理由書で効くのは、自分の足で見てきた具体
  • 第一志望でなくても、行った先で何をするかがすべて

もしあなたが今1年生なら、いちばん価値のある行動は「今学期のGPAを取りにいくこと」だと思う。 地味だし、留学らしさもまったくない。でも、これがいちばん効く。

私は完璧な準備ができたわけではないし、第一志望にも通らなかった。 それでも、あの1年間は間違いなく私の財産になった。

これから出願する人が、少しでも回り道せずに済むように。 この記事がその役に立てば嬉しい。

▶︎ [そもそもなぜ留学したのか、という記事へ] ▶︎ [シンガポール留学の持ち物リストへ]

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